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【地球が燃えている】気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディール【SDGsだけでは弱い】

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このブログに書いた人新世の「資本論」が面白かったので、この本にも何度も登場するジャーナリストのナオミ・クラインさんの最新作地球が燃えている 気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言」を読みました〜

もう本のタイトルからいって心が揺さぶられますよね。

地球が燃えている 気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言発売された頃の米国はトランプ政権でした。

トランプ前大統領はグリーン・ニューディール政策を推進する民主党に対して「やつらの政策はまったくばかげている。市民から自動車を取り上げ、飛行機での移動を禁止して、『カリフォルニアまで電車で行こう』と言う。『牛を飼うことも禁止』なんだからな」と選挙演説をしていました。

再選されることなく終わる大統領の「最後のあがき」とし

トランプは、現代の三重の危機ともいえる状況「差し迫った生態系の崩壊」「経済的不平等の拡大(人種や性差による貧富の格差を含む)」「白人至上主義の台頭」について変革を求める市民の意欲を、相当軽く見ている。

と批判をしています。

本書では日本についての言及はありませんが、気候変動の大きな原因の二酸化炭素を、中国、アメリカ、インド、ロシア、日本の5カ国で世界全体の60%近くを排出しているので、決して人ごとではありません。

日本においては「二酸化炭素排出を容認することが、原発を止めることとトレードオフにされてきた」事実があります。

福島第一原子力発電所の事故から10年が経っても「再生可能エネルギーは不安定で高い」ので「原発は必要」といった考え方に捉われているこの国が残念でなりません。

私は地球が燃えている 気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言を読んで、燃えている地球を鎮火させるためには、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)だけでは弱く「世界全体の課題であり、早くプロジェクトを開始する必要がある」と思いました。

今回も壮大なテーマですがまとめたいと思います。

Z世代の気候対策ストライキ

Z世代とは1995年以降に生まれた若者のことで、幼少期から「気候変動」や「サステナブル」「LGBT」といった言葉に触れている世代です。

2019年3月に子どもたちは学校を抜け出し「地球にスペアはない!」「私たちの未来を燃やさないで」「この家が燃えている」というプラカードをもって行進しました。

気候対策を求める史上初の世界的な学校ストライキは、ミラノで10万人、パリで4万人、モントリオールで15万人。最終的には125カ国で2100件近い、学校ストライキが実行され160万人の若者が参加しました。

この運動の発端となったのは、8ヶ月前にスウェーデンのストックホルムで15歳のグレタ・トゥーンベリさんがひとりで始めた活動です。

グレタさんは同世代の多くの子どものように、8歳くらいから気候変動について学びはじめました。

生物種の激減や氷河の融解、化石燃料を燃やすこと、肉食中心の食生活が地球全体の不安定化の主な原因であることを知り、頭がいっぱいになったそうです。

それなのに政府は動きが鈍く、世界の温暖化ガス排出量は増加し続けています。

世界が燃えているのに、みんなが夢中なのは有名人のゴシップ、セレブ風の自撮り写真、必要もないのに新しい車や新しい服を買うことばかり。

グレタさんは11歳になるころは重いうつ状態になり、話すことも、食べることもやめてしまい、重い病気になりました。

病院での診断は「選択性緘黙症」「強迫性障害」「自閉症(アスペルガー症候群)」です。

自閉症スペクトラムの人「ものごとを極端に文字通り受けとめる傾向があり、認知的不協和に苦しむことが多い」そうです。

グレタさんは「私たち自閉症スペクトラムは全てが黒か白」と言っていて、両親を説得し自分と同じ様に「ヴィーガン」すくなくとも「ベジタリアン」になることを納得させ、飛行機を使うのをやめさせたそうです。

そして2018年8月スウェーデンの国会議事堂の外にキャンプを張り、SCHOOL STRIKE FOR THE CLIMATE(気候のための学校ストライキ)という看板を毎週金曜日に掲げました。

その活動がマスコミの関心を引くようになり、他の生徒や大人が参加し始め、スピーチの招待を受けます。「気候問題の集会」「国連気候変動会議」「欧州会議」「TED×ストックフォルム」「世界経済フォーラム(ダボス会議)」など。

ダボス会議では裕福な有力者たちが、「希望をもらった」とグレタさんを賞賛することに対して

「あなた方の希望などいりません。あなた方にはパニックになってほしい。私が毎日感じている恐怖を。家が燃えているかのように行動して欲しいのです。だって燃えているのだから」

グレタさんは提供された五つ星のホテルの部屋を断り、マイナス18℃の気温の中、野外テントに泊まりました。

このスピーチがネットで急速に拡散し、気候対策を求める史上初の世界的な学校ストライキが起こったのです。

私はここまで読んで、グレタさんを批判する大人たちを思い出します。

プーチン大統領は「現代は世界が複雑で多様であることを、誰もグレタに教えていない」とコメントしたり、EUの外務・安全保障政策上級代表は「グレタ症候群」と揶揄しました。

詳しくはこのブログの【行動経済学】SDGsは実は流行っていない?【キレイごとでは売れない】を読んでみてください。

私は「自閉症スペクトラム」だからこその、彼女の純粋な気持ちが、人々を動かしているのだと思います。

私も16歳のころに「朝まで生テレビ」の「原発問題」を徹夜して観て衝撃を受けました。

こんなに不安定で危険なのに、なぜ原発はあるのか?疑問であり不安になりました。

私は気持ちに蓋をして、グレタさんのように活動はしていませんが、大人になると見失ってしまう、多感な10代だからこその気持ちを大切にしたいと思います。

ビル・ゲイツも出資する地球工学とは?

地球が燃えている 気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言を読んで初めて知ったのですが、地球温暖化の影響を提言させるために「海」や「空」を根本的に変えてしまうハイリスクで大規模な技術的介入をする「地球工学」という学問があります。

海に微小な藻類が高密度に発生する「藻類ブルーム」を人為的に作りだし、藻類が光合成によって炭素を隔離する働きを利用して気候変動を食い止める

火山の大噴火による冷却効果を模して大気圏上層に硫黄酸化物のエアロゾルを散布し、太陽放射を遮断する

雲を「白色化」することにより太陽光線が宇宙に反射される量を増やす

そのリスクは甚大で、海洋の肥沃化は酸素の欠乏した「海の海域(デッドゾーン)」や赤潮などを引き起こす可能性があります。

火山噴火を模倣することはアジアやアフリカのモンスーン(季節風)に干渉することになり、人々の生活水と食糧の供給を脅かす可能性があるのです。

ここまで読んで「金融工学」を思い出しました。

サブプライムローンを代表する住宅バブル崩壊により、2008年9月にリーマンショックが起こり世界規模の金融危機が起こりました。

その背景には「金融工学」がありました。金融工学を駆使してリスクを分散させるために、サブプライムローン(信用度が低い債権)を複数の金融商品に組み込まれました。結果としては金融全体の信用不安を引き起こし「リスク拡散」として機能してしまったという経緯があり、ここまで世界規模の金融危機となったのです。

「金融工学」も「地球工学」も私はちゃんと理解していませんが、嫌な予感がしてしまいます。

ビル・ゲイツは数百ドルの資金を地球工学の研究に注ぎ込んでいるそうです。

世界を良くするために活動していると思うので、今後の動向に注目したいと思います。

具体的な気候政策について

気候政策について「公共インフラ」「経済計画」「企業への規制」「国際貿易」「消費」「租税」という6つの分野で考えています。

1、公共圏の再生

残念ながら、長年にわたり、リサイクル、カーボン・オフセット、エコ電球への交換など努力を続けても、個人の行動では気候変動への対応は不十分だということです。

地下鉄や路面電車などを誰もが利用できる価格(もしくは無料)にして、エネルギー効率の良い安価な住宅を建設し、再生可能エネルギーを運ぶスマートな配電網といった公共財の巨額な投資が必要です。

2、プランニングの仕方を思い出す

国や国際レベルだけでなく、世界中の都市や共同体が「どのように化石燃料から脱却するか計画が必要」

化石燃料からの撤退が進むと仕事に携わる労働者の問題や、農業は「土壌浸食」「異常気象」「化石燃料への依存」という問題があるのでプランニングが必要です。

土壌を枯渇させる「単年生穀物を単一で栽培する」よりも、「多年生の作物を混合作で栽培する」方が、土壌は水を貯蔵し、炭素を吸収隔離することが向上します。

3、企業の手綱を引く

企業が排出できる炭素の量に厳格な上限を設け、石炭火力発電所の新設を禁止する。また環境汚染度の高いエネルギー採掘プロジェクトを段階的に禁止する。

4、生産を地域に戻す

自由貿易が製造業や地域ビジネス、農業に破壊的な影響を与えますが、最大の被害者は大気です。

世界中を行き来して原材料と製品を運ぶ貨物船やジャンボジェット、大型トラックが化石燃料を大量に消費し、温室効果ガスを吐き出している。

先進国の排出量は固定されたが、国際貿易によって開発途上国へ排出量が移動しただけという指摘があります。

5、買い物カルトの終了

地球上でもっとも裕福な20%の人々が消費する物質の量を減らすことが必要であるが、世界経済を支配する大企業は、毎年さらに大きな利益を上げることを要求する、投資家たちに支配されている。

6、金持ちに課税をする

企業や富裕層への課税を増やし、炭素に課税、金融投機に課税、肥大化した軍事予算を削減し、化石燃料産業への補助金(米国だけで年間200億ドル)を廃止する。

グリーン・ニューディールで人類を救う

グリーン・ニューディールとは米国において「温暖化防止と経済格差の是正をもたらす形で行う経済刺激策」のことです。

米国では保守派の多くが受け入れられる気候政策として「石炭火力発電から原子力発電への切り替えや、炭素排出に少額の炭素税を課して、その税収を国民へ配当する」といった案があるそうです。

原子力発電は、再生可能エネルギーと比べてコストが高い上に、ウラン採掘や放射性廃棄物の貯蔵リスクがある。

化石燃料企業からの献金漬けになった共和党議員から支持を得るためには炭素税の税率は低いものになり、インパクトは得られない。

グリーン・ニューディールに気候政策の「成功のチャンス」があるそうです。

1、グリーン・ニューディールは大量の雇用を創出する

再生可能エネルギーは化石燃料よりも多くの雇用を生み出す。2018年の「米国のエネルギーと雇用レポート」ではクリーンエネルギー業界(風力発電・太陽光発電・エネルギー効率化」の雇用は化石燃料業界の雇用を3対1の割合で上回っている。

2、グリーン・ニューディールは公平な経済を創りだす

過剰な利潤を人類の安全よりも優先させてきた化石燃料企業への補助金は、世界中で年間7750億ドル、米国だけでも200億ドルで、再生可能エネルギーと省エネへの投資にシフトする。

国連によると億万長者への課税をたった1%増やすだけで、世界で年間450億ドルの歳入が見込める。これとは別にタックス・ヘイブン(租税回避地)を閉鎖する国際的な取り組みでさらに税収が見込める。

3、グリーン・ニューディールは火事場の馬鹿力を引き出す

劇的な変革が起こらないと壊滅的な温暖化を回避できない。私たち全員が緊急事態であるので、グレタさんのような若者たちにとってエネルギーの源になる。

4、グリーン・ニューディールは先延ばしができない

政治家は自分たちが引退した後に気候問題を設定することが常であり、化石燃料ビジネスモデル全体に立ち向かう難しい任務は永久に彼らの後継者に引き渡されてしまう。

「裕福な国々は無制限に地球を汚染することで裕福になった」だから急速に脱炭素化する必要があり、安全な水や電気が不足する貧しい国々に移行していく必要がある。

5、グリーン・ニューディールは不況にも負けない

過去30年間、持続可能な気候アクションの進展を妨げた最大の原因は「景気後退」になると無くなってしまうが、グリーン・ニューディールは雇用を創出する大型の経済刺激策として希望がある。

6、グリーン・ニューディールはバックラッシュを起こさない

グリーン・ニューディールの大きな強みは、これまでの富裕層優遇の政策と異なり、雇用を創出するのでバックラッシュ(反発)を引き起こさない。

7、グリーン・ニューディールは幅広い支持者を集めることができる

コストを労働者階級に転嫁する政策とは異なるり、様々な分野が交差した大衆運動を動員するパワーがある。

8、グリーン・ニューディールは新しい同盟関係を築き、右派を出し抜く

地球温暖化対策は社会主義を米国に持ち込むための陰謀だと言われるが、大規模なグリーンインフラ構築や土地再生プロジェクトの立ち上げることで大量の雇用を生み出すため、イデオロギー対立の溝を埋められる。

9、この瞬間は私たちのためにある

氷河が融け、氷床が崩れているのと同じほど確実に「自由市場」のイデオロギーも融解し、あるべき姿について新しいビジョンが、学校や職場、議会の内部から出現している。

地球が燃えている 気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言では最後に締め括られています。

あらゆる生命の未来がつながっているいま、私たちにたっせいできないことなどない。

著者のナオミ・クラインさんは長年、気候変動問題をテーマにした著書を多数出版されています。

最新版である地球が燃えている 気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言を読んで、気候変動問題について世界や米国で何が起こっているのか理解が深まりました。

日本はどうしても自国で決められない国なので、米国が変化すれば影響受けていくのでは?と思います。

バイデン政権になってグリーン・ニューディールがどう機能していくのかを、注目していきたいと思います。